教職大学院とは
教職大学院とは優れた指導力を持った教員や、学校現場で他の教員に対してリーダーシップを担う現職教員の育成を目的とした「専門職大学院」である。
学生の対象となるのは新たな教員を目指す大学生と、すでに教壇で一定の経験を持っており、よりレベルの高い指導へとスキルアップを目指す現職教員の2通り。 現職教員は10単位が免除され1年での修了ができるなど、現職教員や一般企業に勤める社会人に配慮した履修形態が取られており、2年の標準就業年数のほか1年以上2年未満の短期履修、2年以上の長期履修も可能となっている。また、現在教員免許のない受講生でも、小学校教諭(1種)・専修免許状の取得ができる。
2008年度から設立され、教科指導や学級経営の理論や実践について専門的な教育を行う。指導教員のうち4割以上は元校長や教員など、実務経験のある専門家で構成される。また、修了に必要な45単位のうち10単位(400時間)以上を学校での実習に充て実際に学級の運営計画を作ったり、児童・生徒の保護者との話し合いに参加したりする。
従来の教育学部や院との違いは、学部や院は教育学を学び研究者を育てる場であったのに対し、教職大学院ではより現場に即した実践的な授業に特化している点だ。
修学期間はおおむね2年間で、各教職大学院が定める45単位以上を修得し、修了すれば「教職修士(専門職)」が授与される。大学を卒業した学生を対象に即戦力となる新人教員を育成するほか、学校現場でのスクールリーダー(中核的中堅教員)的な役割を果たす教員養成のため、現職教員の研修として活用することも想定している。
大学院は連携協力を行う近隣の教育委員会、小学校等(連携協力校)の確保、350時間以上の長期間の指導演習が義務付けられており、連携校での実験的な指導方法を試すこともできるとされている。
教職大学院設立の経緯と問題点
複雑化、多様化している学校現場が抱える課題に対応するため、専門的な知識だけでなく、実践力・応用力を身につけた教員を育成を目指し、文科省により2008年度から設立されたのが教職大学院である。 背景には学力低下、学級崩壊やいじめ、不登校、モンスターペアレントなど昨今の教育情勢の変化による従来の指導方法の行き詰まりのほか、授業の手法での問題や、子供とコミュニケーションに問題を抱える「指導力不足」教員などがある。都道府県教委が認定した指導力不足教員は年々増加傾向にあり、現職教員や学部の新卒者らを対象に、授業や学校運営の能力のレベルアップが必要との見方があるようだ。
教員養成学部を持つ全国の大学は生き残りを賭け、教職大学院の設立を検討している。初年度は国立15校、私立6校の合計21大学が、教職大学院の設置認可を文科省に申請したが、うち2校は提携実習校を確保できていないなどの準備不足を指摘され、途中で認可を取り下げた。認可になった19の大学も、授業実習を免除となる教員経験者・現職教員の定義付けが曖昧であるなど、4月の開設までに解決すべき留意事項が付いた。
審査でさまざまな問題点が指摘された理由は、開設を急いだための準備不足のほか、文科省の基準にあいまいな部分があったことも挙げられている。
また、従来の起用員養成でも実際に教壇に立つ教員育てることが目的であったにも関わらず、「教員としての実践力」があまり重視されてこなかったため、指導方法のノウハウの蓄積や指導に当たることのできる教員の確保が十分できないからではないか、とも言われている。
つまり日本の大学における教員養成は、教育学の理論や学問的研究が中心となりがちで、学校現場で役立つ実践力の育成などに関心が薄かったということであり、より実践的で高度な指導力を持つ教員を育成するという教職大学院の開設をきっかけに、かえって実践を軽視してきた従来の大学の体質が浮かび上がったこととなる。
また、教育関係者の間には、「教員の指導力は学校現場で磨かれるもので、実践的指導力を中心にした養成は、いびつな教員をつくるだけだ」として、教職大学院をはじめとする実践力重視の教員養成について慎重な意見も出ている。






